やなぎなぎ「小夜すがら」


先日、やなぎなぎ氏の「小夜すがら」という作品があることをメルカリ大捜索中に知った。

メジャーデビューしてからの彼女の作品はポリオミノを分岐点に、ヘビィなファンからライトなファンになっていたが、いちおうアルバムは多かれ少なかれ聴いていた。

話を小夜すがらに戻そう。小夜すがらという作品はどうやら、なぎ氏がセルフプロデュースした、ミニアルバムらしい。ずっと気になってはいたが、遂に借りてしまった。


やなぎなぎ「小夜すがら」

01.ネムラズ

02.嘘月

03.mama

04.夜菓子

05.片割れ月


実はというと、わたしは05.の片割れ月という曲がすきだ。(片割れ月とは、なぎ氏の「EN」といういまはもう手に入らないくらいプレミアがついている幻のアルバムに収録されている曲である。)本音をいうと、この曲を聴きたい、データが欲しいからという阿保みたいな理由で小夜すがらを借りた。片割れ月のことは後述するとして、とりあえず順に感想を述べていこうと思う。


01.ネムラズ

単純に言葉から想像するに、「意図的に眠らない」 夜とは魅力的で、普段みることのできない世界がひろがっている。それを端的に表した、ミニアルバムの幕開けにぴったりの曲である。また、はじまりの音がシンプルではなく、すこし複雑な楽器の音がするのも夜の世界観をグッと表しているように思う。

また、ブックレットの装丁では満月をモチーフにしている。歌詞に出てくる「眩しすぎる月」は満月のことだろうか。


02.嘘月

言葉遊びだろうか、嘘月、うそつき、嘘吐き。このミニアルバムのなかで最もへんな曲である。わたしはそんなへんな曲がいちばんすきだ。

歌詞にある、嘘と薬。なにが隠されているのかわからないが、なんだか危うい歌詞である。夜の危うさを月と嘘と薬で表しているのだろうか。

ブックレットでは前トラックのネムラズの満月に大きな影ができたかのようなデザインである。この影を月だと解釈するならば、欠けた月のようであるが、この文章を書いているとやはり、満月の影という線のほうが納得できる。

01.ネムラズの「眩しすぎる月を裏返せ そうでないと眠れない」という一節から察するに、この薬とは睡眠薬ではなかろうか。と思ったら、ふつうに嘘月に「だってこのままじゃ忘れられないんです眠れないんです」と書いてありました。薬=睡眠薬ですね。


03.mama

主旋律とコーラスが混ざる、掛け合う、なんとも言えぬ不思議な曲。mamenoiのKleinchenを彷彿とさせる構成である。

歌詞の内容については触れない。と思ったが、すこしだけ。supercellのLOVE&ROLLのような小悪魔な感じだなと。(体感ですけどね)

ブックレットでは皆既日食のようなデザインで、前のふたつからみて、月の満ち欠けがうまく作用しているように思う。


04.夜菓子

まだ全く飲み込めていないが、すこしだけ述べるとするならば、きっと夜に「月を溶かして お砂糖にして」お菓子づくりをして、つくりすぎた曲なのだろう。(雑)サビがキャッチーで良い。ららら〜の間奏部分ですこしささくれPのカムパネルラを想起した。


05.片割れ月

「EN」収録の片割れ月ではなく、再録である。「EN」ではピアノ伴奏と後半、間奏部分に英語のコーラスが入っているが、「小夜すがら」ではアコギ伴奏である。

また、伴奏や構成だけではなく、歌い方にも変化があった。「EN」では無感情な歌声であったが、「小夜すがら」では声に感情がこもっているという大きな相違点と、「嘘が上手〜片割れ月」までのやや重なる部分(掛け合いと言えばいいのか)が分離して、一気に歌っていることがわかる。ENから12年間という時を経て新たなアレンジで片割れ月を聴ける喜びを噛み締めている。

しかしながら、わたしはENの片割れ月のほうがすきだ。音質はあり得ないくらい悪いし、歌はふらふらしているが、最初のアレンジ(ピアノ伴奏や英語のコーラス、それからなぎ氏の無感情の声)が格別にすきなのだ。片割れ月(EN)があったのでよかったら参考までにhttps://youtu.be/daNoDy1n0bU


熱く語りすぎて収拾がつかなくなってきたので、最後に装丁を。


04.夜菓子と05.片割れ月はそれぞれ半月のデザインになっている。夜菓子では月を溶かして砂糖にしたり、片割れ月はそのままであるが、片割れの月だ。どちらも欠けた月をモチーフにしており、当然のデザインであろう。


やなぎなぎ氏のアルバムはモチーフがしっかりしており、ところどころに隠されたキーワードやヒントを頼りに、考察していくとおもしろい仕掛けが施されていることに気付く。

よかったら別のやなぎなぎ氏の作品も聴いてみてほしい。